米国司法試験の概要

私が受験したワシントン州はUBE(Uniform Bar Examination)方式のため、以下UBEを前提に記載します。
(1)試験科目、得点配分
ワシントン州の試験科目、得点配分は以下のとおりでした。
ア.MBE(Multistate Bar Examination、50%)
・ConstitutionalLaw(憲法)
・Criminal Law and Procedure(刑法、刑事訴訟法)
・Contracts(契約法)
・Torts(不法行為法)
・Real Property(不動産法)
・Evidence(証拠法)
・Civil Procedure(民事訴訟法)
イ.MEE(Multistate Essay Examination、30%)
・Family Law(親族法)
・Wills(相続、遺言)
・Trusts(信託法)
・Business Associations
-Agency(代理法)
-Partnership(組合法)
-Corporations(会社法)
・Secured Transaction(担保取引法)
・Conflict of Laws(抵触法)
ウ.MPT(Multistate Performance Test、20%)

(2)合格得点
・以下で州ごとの合格得点が公開されています(UBE州)。
260~280点の間で合格ラインが設定されているようです。

出典 NCBE, “Minimum Scores
・NCBEがまとめている全州の試験概要につき、より詳しく確認されたい方はこちら。

・ワシントン州では、400点満点中、270点取得で合格とされています。
・ニューヨーク州も2016年7月試験からUBE方式に移行しました(合格点は現在、266点とされています)。今般の流れを踏まえると、今後、UBE方式に移行する州はより増えていくのではないかと個人的には予想しています。
・日本人留学者の多くが受験するニューヨーク州がUBE方式となったことで、私の拙いUBEでの経験を多少なりともお役に立てていただける方がいるかもしれないと思われたことが、本稿執筆の理由の一つにもなっています。
(日本人受験者の多い2大州のもう一つと言えばカリフォルニア州ですが、カリフォルニア州でも従前からMBEが実施されていた他、PTが90分1問となったことで、MPTを参考に対策されたとの体験記も見ることがありました。その意味では、(カリフォルニア州の突出した難しさはさておき、)少なくとも試験準備に関する限り、似通ってきている面もあるかもしれないと思われました。)

(3)合格率
ア.統計
現時点で入手可能な情報に基づき、合格率データの関連部分をまとめてみると、以下のとおりです。
(ア)ワシントン州

 

2017F

2017J

2018F

2018J

ABA-JD

58.0%

76.0%

50.2%

72.4%

Foreign/

LLM Graduate

30.6%

34.8%

30.0%

23.7%

Foreign Common Law Attorney

0.0%

25.0%

12.5%

40.0%

Total

57.7%

72.3%

49.2%

68.7%

 

2019F

ABA-JD

52.8%

Foreign/

LLM Graduate

29.3%

Foreign Common Law Attorney

50.0%

Total

50.8%

(傾向)
・ABA-JD:合格率は、7月試験で70~80%、2月試験で50%周辺。
・Foreign/ LLM Graduate:合格率は、20~40%程度。

(イ)ニューヨーク州
ニューヨーク州は従来からForeign educated LLMの受験を認めています。 

 

2014F

2014J

2015F

2015J

ABA Graduates

60%

77%

55%

73%

Foreign Educated

30%

34%

26%

33%

All Candidates

47%

65%

43%

61%

 

2016F

2016J

2017F

2017J

ABA Graduates

49%

75%

52%

78%

Foreign Educated

30%

37%

34%

48%

All Candidates

40%

64%

44%

68%

 

2018F

2018J

2019F

ABA Graduates

45%

74%

53%

Foreign Educated

28%

41%

35%

All Candidates

38%

63%

45%

(傾向)
・ABA Graduates:概ねワシントン州と同様、合格率は、7月試験で70~80%、2月試験で50%周辺。
・Foreign Educated:概ねワシントン州と同様、 合格率は20~40%程度。ABA Graduates程ではないが、7月試験の合格率が高く、2月試験の合格率が低い傾向あり。

(ウ)カリフォルニア州
カリフォルニア州は合格率の低さで有名です。

 

2014F

2014J

2015F

2015J

CA ABA Approved

59.5%

62.2%

49.0%

59.8%

Foreign Educated

18.3%

7.3%

20.9%

11.8%

Foreign Attorneys

22.7%

9.2%

22.9%

13.8%

Total(General Bar Exam)

45.3%

48.6%

39.5%

46.6%

 

2016F

2016J

2017F

2017J

CA ABA Approved

45.9%

54.0%

46.1%

60.9%

Foreign Educated

13.4%

12.8%

15.9%

19.2%

Foreign Attorneys

16.1%

12.3%

16.6%

21.0%

Total

35.7%

43.1%

34.5%

49.6%

 

2018F

2018J

2019F

CA ABA Approved

33.8%

53.4%

39.1%

Foreign Educated

10.7%

16.3%

15.5%

Foreign Attorneys

16.1%

12.7%

16.7%

Total

27.3%

40.7%

31.4%

 (傾向)
・CA ABA Approved:概ね、合格率は7月試験で60%前後、2月試験で50%前後かそれ以下。7月試験:高、2月試験:低との傾向が見られる。
・Foreign Educated:ほとんどのケースで合格率は20%以下。10%程度又はそれ以下となることもある。
・Foreign Attorney:Foreign Educatedより合格率が若干高い傾向があるが、大きな差はない。
・Total:全ての回で50%未満。

イ.結論
UBE州であるワシントン州とニューヨーク州を前提とすると、以下が言えるかと思います。
(ア)JD
合格率は、7月試験で70~80%、2月試験で50%前後。
(イ)Foreign LLM
合格率は、20~40%。
(ウ)2月試験と7月試験
7月試験と比べると、2月試験の合格率は下がる傾向にある。(再受験者が多いことが原因と思われる。)

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初出 2018年11月27日