米国税理士が選ぶ経済・ビジネス映画ベスト16

映画には、気分転換になる、異世界を疑似体験できる、仕事や人生に役立つ教訓が得られるなどのメリットがある一方、時間は2時間程度、費用は無料~2000円程度とコストも殆どかからず、現代最強の娯楽の一つと言えると思います。
以下、経済・ビジネスを扱った映画で個人的に印象に残っているものとの観点で、名作16作品を選びました。まだ観ていないものがありましたら、お勧めです。
(法律・法廷映画18選はこちら。)

1.マネー・ショート 華麗なる大逆転(2015)

引用元 アマゾン

※アマゾン、ネットフリックスで配信が確認できた作品にリンクを付しています。
予告編

(1)概要
・リーマン・ショック前の不動産バブルで市場がバブルに浮かれる中、虚構を見抜き、空売りで巨額の利益を得た「変人」たちの物語。
・監督(アダム・マッケイ)・原作(マイケル・ルイス『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』)・出演(クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット等)とも超豪華。
(2)評価※

アカデミー賞受賞 脚色賞
アカデミー賞ノミネート 作品賞、監督賞、助演男優賞、編集賞

※製作国のアカデミー賞に限定して記載しています。
(3)一言コメント
・それぞれの当事者(銀行、証券会社、投資会社、格付会社、政府関係者、国民)が自分の利益だけを追求した結果、実態のないバブルが生まれ、破綻に至ったというストーリーなので、「市場を出し抜いた」的な爽快感は余りないです。
・他方で、エンタメ性を失わず、難解になりすぎないよう配慮されているので、娯楽作品としても十分に楽しめます。
・リーマン・ショックとは何だったのかを学習したいという方にはお勧めです。

2.インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実(2010)

引用元 ソニー・ピクチャーズ

予告編

(1)概要
リーマン・ショックに関わった当事者たちへのインタビューを通じて、何が起こったのかを明らかにしようとしたドキュメンタリー映画
(2)評価

アカデミー賞受賞 ドキュメンタリー賞
アカデミー賞ノミネート

(3)一言コメント
・俳優による演技ではなく、生の当事者たち(学者、金融機関、エコノミスト、政府関係者、ロビイスト、報道機関等)に直接インタビューしているので、臨場感があります(当然ながら出演拒否も多数ありますが)。
・経済破綻を引き落とした要人が責任を取らず、規制強化も進んでいないという現実にフラストレーションを覚える向きもありますが、現代社会が抱える課題を知るという意味でも、とても有用です。
・アメリカでは上位1%だけが勝ち組となり、残り人口の90%超は負け組となるという超格差社会が発生しているとの主張も。

3.ウォーレン・バフェット氏になる(2017)

引用元 アマゾン

予告編

(1)概要
「投資の神様」、「オマハの賢人」ウォーレン・バフェット氏に密着したドキュメンタリー
(2)評価

アカデミー賞受賞
アカデミー賞ノミネート

(3)一言コメント
・世界長者番付トップ10に毎年登場するお金持ちであるにも関わらず、生まれ故郷のネブラスカ州オマハで60年以上前に買った家に住み続け、朝食のマックが2ドルと3ドルでどう違うかを楽しそうに語り、質素で慎ましい生活を送る姿には、感動すら覚えます。
・この映画を観ると、ウォーレン・バフェット氏が世界中から愛される理由が分かる気がします。投資への興味の有無に関わらず、人生哲学を学べる映画としても広くお勧めです。

4.ハゲタカ(2009)

引用元 アマゾン

予告編

(1)概要
・真島仁氏の同名小説を原作に好評を博したNHK連続ドラマ『ハゲタカ』の4年後を描いた劇場公開版
・日本の大手自動車メーカーの買収を巡る中国系投資ファンドとの攻防劇がメイン・ストーリー
(2)評価

日本アカデミー賞受賞
日本アカデミー賞ノミネート 主演男優賞、助演男優賞

(3)一言コメント
・ここでもリーマン・ショックが影を落としています。制作中に発生したことで、脚本の8割を書き直すことになったとか。
・企業買収を巡るファンド間の攻防が主なストーリーですが、お金が人の人生を狂わせる哀愁が根本に流れているように感じました。
・Wノミネートされただけあり、大森南朋・玉山鉄二の両氏とも好演です。骨太の日本映画を探している方にお勧めです。

5.マネーボール(2011)

引用元 ソニー・ピクチャーズ


予告編

(1)概要
・オークランド・アスレチックスのゼネラル・マネージャーが統計を用いて分析・戦略構築する手法を取り入れ、資金力ある球団と戦うチームを作っていくというドラマ。20連勝を達成した点など、実話に基づく。
・原作はマネー・ショートと同じくマイケル・ルイス(『マネー・ボール』)。ブラッド・ピット主演。
(2)評価

アカデミー賞受賞
アカデミー賞ノミネート 作品賞、主演男優賞、助演男優賞、脚色賞、編集賞、音響編集賞

(3)一言コメント
・データ・サイエンスに基づく分析手法の導入、古き佳き時代を愛する現場との葛藤、新しいことを浸透させていく困難など、個人的にも響くものがありました。
・イチロー選手もちょっとだけ映ります。笑

6.ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013)

引用元 アマゾン

予告編

(1)概要
・ジョーダン・ベルフォートの回想録(『ウォール街狂乱日記-「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生』)を原作に描く、株式ブローカーの成り上がり物語。
・監督(マーティン・スコセッシ)・出演(レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マーゴット・ロビー、マシュー・マコノヒー等)とも豪華。
・日本公開時はR18指定(性的コンテンツ、薬物・暴力シーン等)。
(2)評価

アカデミー賞受賞
アカデミー賞ノミネート 作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、脚色賞

(3)一言コメント
・とにかくぶっ飛んでます(笑)。「下品で何が悪い」ぐらいの開き直り感(笑)。これだけ突き抜けていると、むしろ高評価されるのかと逆に勉強になりました。『ウォーレン・バフェット氏になる』の対極にあるような映画。
・「俺にこのペンを売ってみろ」のシーンは、経済学の現実適用として興味深かったです。
・原作のジョーダン・ベルフォートも最後にちょっとだけ出演します。

7.マージン・コール(2011)

引用元 アマゾン

予告編

(1)概要
リーマン・ショック前夜の大手投資銀行(リーマン・ブラザーズがモデルと言われる)の24時間を舞台に、役員・従業員が取る行動を描いたドラマ
(2)評価

アカデミー賞受賞
アカデミー賞ノミネート

(3)一言コメント
・製作規模の小ささも反映して、派手なアクションなどはなく、華々しい賞(アカデミー賞等)も受賞していませんが、群像劇として好きな作品の一つです。
・この種の経済映画でお勧めに上げられることも多く、地味な作品ながらファンが多いことが、その内容の良さを物語っているように思います。
・価値がないものを気付かれない間に売り抜くという詐欺まがいの行為に突き進んでいった葛藤も描かれています。

8.ソーシャル・ネットワーク(2010)

引用元 ソニー・ピクチャーズ

予告編

(1)概要
・ベン・メズリック『facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男』を原作に、Facebookの成立・発展過程を描いた作品
・監督はデヴィッド・フィンチャー(『セブン』、『ファイト・クラブ』、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』等)。
(2)評価

アカデミー賞受賞 編集賞、作曲賞、脚色賞
アカデミー賞ノミネート 作品集、主演男優賞、撮影賞、監督賞、録音賞

(3)一言コメント
・前半は、GAFAの一角であるFacebookが黎明期から立ち上がっていく姿が見られ、疾走感があります。ハーバード大学の女子学生の顔の格付けサイトという、倫理的な正しさとは無縁なところから始まっているという事実も興味深いです。
・後半は、共に事業を立ち上げた親友、資金支援を受けた学友から提起された訴訟への対応が増えることで、展開が落ち着いてくる一方、哀愁も滲んで来ます。お勧め法律・法廷映画の方に分類しようか迷ったほどです。笑
・映像の美しさは、安定のデヴィッド・フィンチャー監督。

9.スティーブ・ジョブズ(2013)

引用元 アマゾン

予告編

(1)概要
スティーブ・ジョブズがアップルを立ち上げ、会社を追われ、復帰して時価総額世界一の企業に発展させるまでを描いた伝記映画
(2)評価

アカデミー賞受賞
アカデミー賞ノミネート

(3)一言コメント
・良く言われることですが、世界最大の企業になったアップルも、最初は自宅のガレージで仲間と家庭用コンピュータを作るところから始まっています。「なぜ日本からはGAFAが出ないのか」とは度々出される問いですが、観る者に考えさせるものがあります。
・ジョブズにクビにされたことを「スティーブされた」とアップル社内では言ったそうです。我の強い非情家と剛腕・有能な経営者との境界は案外曖昧な気が個人的にはしています。

10.インターンシップ(2013)

引用元 アマゾン

予告編

(1)概要
時計販売会社をクビになった中年セールスマン2人組が、ITの知識皆無ながら持ち前のポジティブ思考と話術を武器にグーグルのインターンシップに挑むというコメディー・ストーリー
(2)評価

アカデミー賞受賞
アカデミー賞ノミネート

(3)一言コメント
・グーグルが舞台ということで、気になって見ました。
・社員に求めるグーグリネス(グーグルらしくあること)とは、多様性・チームワーク・親しみ易さなどを意味するそうです。
・ビリーを演じたヴィンス・ヴォーンが脚本・製作とも担当していたと後で知り、ちょっぴり驚き。

11.ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密(2017)

引用元 アマゾン

予告編

(1)概要
マクドナルド兄弟が営んでいたハンバーガー店を、ミルキシェイク用ミキサーのセールスマンをしていたレイ・クロックが乗っ取り、世界最大のファーストフードチェーンに発展させた伝記映画
(2)評価

アカデミー賞受賞
アカデミー賞ノミネート

(3)一言コメント
・「マクドナルドを創った兄弟と支配した男」とのキャッチ・コピーがハマってます。マイケル・キートン演じるレイ・クロックがなかなかのクズっぷりを発揮しています。笑
・「弱肉強食」の世界を生き抜く野心、執念としては参考になるところがあるかも。
・レイ・クロックの自伝・評伝を基に脚本が製作されたようですが、多少の偏りはあるかもしれません。マクドナルド兄弟は善人・被害者的に描かれていますが、反対の意見も聴いてみたいところではあります。

12.happy-しあわせを探すあなたへ(2012)

引用元 アマゾン

(1)概要
幸福度研究の世界的リーダーや、脳医学・心理学の権威を招いて、世界の代表的な国々を対比させつつ、幸福度を高める鍵を探ったドキュメンタリー映画
(2)評価

アカデミー賞受賞
アカデミー賞ノミネート

(3)一言コメント
・収入が一定額を超えると金銭による幸福度は殆ど上昇しなくなると言われています。
・金銭による幸福に限界があるとすれば、それでも幸福度を上げるにはどうすれば良いか。
・経済やビジネス活動の目的の一つが人々の幸福にあるとすれば、ある意味ではそれら活動の一歩先を行くテーマかもしれません。
・この映画では色々なアイデアが出てきますので(例:新しいことをする、自己の成長、家族や友人と助け合う、感謝するなど)、自分に合ったものを取り入れてみると良いのではないかと思われました。

13.ミニマリズム 本当に求められるもの(2016)

引用元 アマゾン

※アマゾンは米国サイト
※ネットフリックスは2021年版(『今求められるミニマリズム』)
予告編

(1)概要
ミニマリズム(モノを最小限しか持たない生き方)のムーブメントを世界に大きく広げたドキュメンタリー
(2)評価

アカデミー賞受賞
アカデミー賞ノミネート

(3)一言コメント
・「たくさん働いて不要なもので溢れる生活を送っても、幸せにはならない」、「不要なものを減らしていくことで、本当に大切なものが見えてくる」との主張には個人的に共感できるところがありました。
・単なる断捨離の技術論にとどめず、人々を感動させ、心を突き動かす理念として昇華させた(上記予告編ご参照)のは見事であると感じました。

14.アメリカン・ファクトリー(2019)

引用元 ネットフリックス

予告編

(1)概要
ゼネラルモーターズの工場が閉鎖された後、現地雇用を救うとの名目でオハイオ州に参入してきた中国企業と、米国人労働者との間で起こる衝突や克服を描いたドキュメンタリー
(2)評価

アカデミー賞受賞 ドキュメンタリー賞
アカデミー賞ノミネート

(3)一言コメント
・海外進出した企業が抱える経営上の問題、文化の違いをどう乗り越えるかなど、経済のグローバル化に伴って起きる生々しい課題が多く含まれていて、興味深かったです。
・オバマ元大統領の製作会社1本目の作品にして、アカデミー賞受賞作。

15.ウォール街(1987)

引用元 アマゾン

(1)概要
若手証券マンが、冷酷・貪欲な成功した投資家に憧れ、共に企業買収等を行うようになり、破綻するまでを描いた金融サスペンス
(2)評価

アカデミー賞受賞 主演男優賞
アカデミー賞ノミネート

(3)一言コメント
・マイケル・ダグラス演じるゴードン・ゲッコーが言った「Greed is good.(強欲は善)」は有名です。欲と言っても色々あり、知識欲、成功欲、金銭欲などがなければ、社会はこれほど発展しなかったというのがその主旨。それはそれで、真実の一面かもしれません。
・オリバー・ストーン監督は強欲が生み出す過剰な資本主義を批判したかったようですが、マイケル・ダグラス演じるゴードン・ゲッコーが魅力的過ぎて、憧れたり、影響を受けて証券会社に入社したりする人が後を絶たなかったとか。
・マーティン、チャーリー・シーンが、時に対立しつつも愛情に支えされた親子を熱演しています。

16.マルサの女(1987)

引用元 アマゾン
(1)概要
国税局査察部(マルサ)の査察官と脱税者の戦いをコミカルに描いた伊丹十三監督作
(2)評価

日本アカデミー賞受賞 作品賞、主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、監督賞、脚本賞
日本アカデミー賞ノミネート

(3)一言コメント
・税金・税務に関わる分野を業務の一つとする人間として挙げざるを得ない日本映画の名作。
・「納税者に誤解を与えることのないよう」と国税庁も撮影に協力。脱税という当時誰も思いつかなかったテーマを選び、徹底した事実調査の上、一流のエンタメ作品に仕上げた伊丹十三監督の手腕は流石です。
・動画配信サービスにはなく、DVD等の購入・レンタルしか鑑賞手段がなくなってきているため、やむなくこの順位となりました。

 

以上の16作品を個人の主観で勝手にマッピングしてみると、こんな感じです。笑
一般には左下から右上に直線的に上がっていく傾向が見られますので、その意味では「ウォーレン・バフェット氏になる」は稀有な作品と言えるかもしれません。
ご参考になれば幸いです。

 

 

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