アクティブ投資に関しては、「いつもそのとおりにすれば儲かる」というような再現性の高い手法を見つけるのは至難の業であるように思います。
もっとも、個別銘柄の選定基準や売り買いのタイミング・方法といった点では、有益なアドバイスもあります。
以下では、個人的に参考になったものをいくつか紹介いたします。
1.ジャネット・ロウ『バフェットの投資原則』
【概要】
①株式投資の極意とは何か。
株式投資の極意とは、良い銘柄を見つけて、良いタイミングで買い、良い会社である限り持ち続けること。これに尽きる。
②個別銘柄の選定術
・私好みの企業は、例えるなら、かっこいいお城のようなものだ。周囲を深く危険な濠に囲まれ、中には正直で慎みのあるリーダーがいる。我々が投資したいと思う企業は、市場で圧倒的な力を誇り、真似をすることが困難で永久に揺るがないと思えるほど強力なフランチャイズを持っている企業である。
・大半の人は、他の人が興味を示している株に興味を持つようだ。でも本当は、そうでない株に興味を持つのがベストである。既に人気の株を買っても高い利回りを得ることはできない。
・ダウンサイジング(人員削減を伴うコストカット、企業縮小)でダメになった企業は思いつかない。逆に、組織を大きくしすぎてダメになった企業はごまんとある。
・バカでも経営できる企業を探しなさい。いずれ、そういう人間が経営者になるのだから。
【教訓】
・ウォーレン・バフェット氏は、自らの考えを著書にまとめて出版するということはしておらず、本書では、バフェット氏の発言が第三者によってまとめられています。バフェット氏の考え方が分かって参考になります。
・長年投資家目線で企業経営を見ていたファンダメンタル分析の雄ですので、ロバート・キヨサキ氏のいうE(従業員)やB(経営者)目線から見ても、どういう会社を永続的な良い会社と見るべきかが分かって、興味深いです。
・初期段階では、個人的に(自称)バークシャー・ハサウェイの追っかけクラブになって、真似して個別銘柄を買ったりしていた時期もありました。笑
2.ピーター・リンチ『ピーター・リンチの株で勝つ アマの知恵でプロを出し抜け』
【概要】
①投資戦略1/業績回復株
・時として一連の不運から大会社が窮地に陥ることがあり、そこから回復するときには株価が大きく動く。クライスラーも、フォードも、ベツレヘム・スチールもそうだった。
・業績回復株は、会社更生法の世話にはならなかったものの、大いに痛めつけられて、業績不振の淵から立ち直ったような企業の株である。業績回復株は、きわめて急速に失地を回復する。うまくいった業績回復株に投資する醍醐味は、その株価が相場一般とは無関係なことである。
・業績回復株に投資する際のチェックポイントは、1)倒産を回避できること、2)コスト削減が行われていること、3)業績回復への羅針盤を持っていること。
・業績回復株は、業績が転換点を超えた時点で売るのが一番。一旦業績回復すれば、その株は業績回復株ではなくなるので、新たな分類が必要になる。
②投資戦略2/急成長株
・私の個人的な好みは、急成長株、即ち、年に20%以上の成長を遂げ、うまくすれば株価が10倍以上になるような小企業株である。
・成長性を見極める鍵は、売上成長率とPER。
・私が何より避けたいのは、超人気産業の中の超人気企業である。ニュースを賑わし、誰もが通勤途上でも耳にし、つい周囲に押されて買ってしまうような株である。人気化した株は急騰するが、夢を買っているだけなので、落ちるときも急だ。
③投資戦略3/相場全体の下げ
・相場の下げは、ポートフォリオの中で将来有望だが、まだパフォーマンスが悪いものを買い増しする絶好のチャンス。
・普段から株価が下がったらぜひ保有したいという銘柄をリストアップしておく。数年に一度起こる暴落や反落が絶好の購入のチャンスである。
④投資戦略まとめ
1)低成長株は、リスクも小さい代わりに、大して儲かることもない。
2)優良株(例:コカコーラ)は、リスクが小さく、そこそこ儲かる。
3)市況関連株(株価が循環的に上下する株)は、どれくらい市況の見通しに明るいかに大きく左右される。
個別株で大きく利益を得られるとしたら、4)急成長株か、5)業績回復株のいずれかであるが、どちらもハイリスク・ハイリターンになる。
ポートフォリオの理想としては、2)優良株2社、4)急成長株4社、5)業績回復株4社。安定株を混ぜることで、リスクを軽減する。
【教訓】
③相場全体の下げ
前述のとおり、以下の検討を辿ると、相場全体の暴落時は買いだという結論に帰結する可能性は高いよう思われます。
1)元々、長期的に成長すると考える市場を選んで、その全体に投資するという手法を採った。
2)暴落が来て、一時的に価格が下落した。この暴落があっても、全体の成長性はいずれ回復すると見込んでいる。
3)それなら、安くなっているときにいつもより多く買った方が得である。
①業績回復株
業績回復株は、③相場全体の下げに似た局面が多いように思われます。
特に市場全体の暴落に連動して、一部産業が平均以上に「痛めつけられている」ような場合であれば動き易いというのが個人的経験です(例:コロナ相場で航空産業全体が平均より大幅に下落した時期は、個人的には対処がし易い場面でした)。
他方、市場全体とは関係なく、個別のセクターや企業の内部要因に起因して下落している場合は、「成長はいずれ回復する」と本当に言えるのか慎重な吟味が必要で、判断の難易度が上がるように感じています。
②急成長株
企業のファンダメンタルが良ければ株価が急上昇するとは限らず、事業の成長性などとは全く無関係に、ロケットのように上昇していく銘柄も見受けられます。
結局、株式投資というのは、多くの方々が買いたいと思う銘柄を探し当てる「人気コンテスト」に過ぎませんので、どこまで理論的に分析してみても、個別株の売買に関する限り、最終的にはギャンブルの要素は排除できないように思われます。
この辺りは各人のその時々のリスク嗜好度に応じて対処が変わってくるものと思われます。
3.ジム・クレイマー『ジム・クレイマーの株式投資大作戦』
【概要】
①投資の秘訣は何か。
ゲームに参加し続けることこそが、株式投資で成功するための最大の秘訣だ。
ほとんどの人が株式投資で金持ちになれないのは、成功するのに必要な期間、じっと我慢してゲームに参加し続けられないからだ。
途中で飽きてしまったり、いらいらして音を上げたり、向こう見ずな投資に走ってしまう。
②個別銘柄をどう選定するか。
対象企業の①EPS伸び率、②PERを、それぞれS&P500の平均と比較する。
平均より①伸びていて、②割安であることが購入の条件。
実際、この2つがウォール街でも用いられている2大基準である。
③買い時はいつか。どう買えば良いか。
・最も有利な投資タイミングは、ファンダメンタルズがしっかりしている企業の業績が一時的に落ち込み、市場が理不尽な水準までに売りたたいている時。
・最初は小手調べ程度にしておいて、相場が再び崩れて本当の底入れをする時に大きな傷を負わないように気を付ける。
・一度にまとめて投資しない。まず10株だけ買って様子を見る。もし株価が下がれば、また買い増す。
・長期投資の基本は、これと決めた銘柄の株価が下がれば、買い下がること。市場が崩れた時に買うべき銘柄のショッピング・リストを普段から作っておく。
④売り時はいつか。どう売れば良いか。
ある銘柄を手放そうと決めた時も、まず4分の1から半分だけ手放す。
一旦上がったところで反落すれば、いつでもまた買戻しできる。
株価が上がれば売り始めるが、大事なことは依然として勝ち馬に賭け続けているということである。
【教訓】
②個別銘柄の選定
・当初は管理会計等の知識も活用しようと、財務諸表を用いて様々な分析値を算定していましたが、やがて使わなくなりました。
・結局は、現実に対して説得力を持つのは以下だという考えに至り、以下を重視するようになりました。
1)その産業は全体として、今後どの程度成長するのか(市場成長率)。
2)その企業は、全体のパイの中でどれだけのシェアを持っているのか(市場シェア)。
3)その企業は、実際に売上・利益が伸びているか(売上・利益成長率)。
・3)の売上・利益成長率は、前述の経産省「ローカルベンチマーク」を使用していた際に定着したものでした。
・その意味では、ウォール街の専門家もEPS伸び率を見ているとの指摘は興味深かったです。
・多くの方の実感でもあるように、PERに関しては、数値が異常に高くても伸びる会社の株価は爆増していきます。反対に、PERを根拠に安いと判断しても、後になって振り返ってみると「お買い得」ですらなかったということもままあります。その意味で、個人的にPERは重視しなくなりました。
③買い時、④売り時
・ピラミッディングの手法を身に付けていないと、良い銘柄を見つけても、いつ買うか、いつ売るかを巡って深刻な悩みに遭遇することになります。
・加えて、半年前に1株150ドルだった銘柄が今日100ドルまで下がっていたので買い時だと判断して購入したのに、翌日になると80ドルまでさらに下落して絶望するというような事態に頻繁に直面することになります。
・買おう・売ろうと思ったときにまずは一部だけ購入・売却してみるという選択肢を持てれば、それだけで持てる心の余裕は大きく変わってくるように思われます。
4.ウィリアム・オニール『オニールの成長株発掘法』
【概要】
①株式投資で勝つ秘訣は何か。
勝つ投資とは、小さな成功を出す10銘柄を保有することではなく、大きな利益を出せる銘柄を1~2に絞り込んでいくことである。
②銘柄選定/PERは目安になるか。
・PERが低くてお買い得だという理由だけで株を買ってはならない。PERが低いのには、それなりの理由がある。
・株式市場における大いなる矛盾とは、株価が高すぎてリスクが高そうに見える銘柄はさらに値上がりし、株価が低く割安に見える銘柄はさらに値下がりすること。
③買い時はいつか。どう買えばよいか。
ナンピンではなく、ジェシー・バリモアがいう「ピラミッディング」をする。
最初に株を少額で買い、株価が上昇したらさらに株を買い足す。こうすることで正しい銘柄選択ができたと思われるものだけ増し玉していける。
逆に銘柄選択が誤っていて、買値よりも一定額下回ったら、すぐに損切りする。
④インデックス投資について
1)インデックス投資は常に買い時である。完璧なタイミングを探す必要はない。
2)給料から自動的に天引きして毎月一定額を投資するのが良い。
3)下落市場でも途中でやめない。弱気相場は6か月からまれに3年続くことがある。
4)個別株でナンピン買いをするのは悪手だが、インデックス投資はドル・コスト平均法で問題ない。前者は最悪、価値がゼロになることがあるが、後者はそれがないから。
5)最低でも10年は保有し続ける。
【教訓】
②PER、③買い時・買い方とも『ジム・クレイマーの株式投資大作戦』のところで述べたとおりです。
5.マーク・ミネルヴィニ『ミネルヴィニの成長株投資法 高い先導株を買い、より高値で売り抜けろ』
【概要】
①銘柄選定/売上と利益
ファンダメンタルズについては、通常、私は過去1~2年の売上高とEPSを見て、それらが何らかの形で加速しているかどうかを確かめる。
②銘柄選定/PER
・大抵は、その業界でパフォーマンスが劣っていて低PERの銘柄よりも、割高に見える先導株の方が、結局は割安である。
・重要なポイントは、選り抜きの急成長株を見つけるときに、PERにそれほどの予測力はないということだ。PERに特別な意味などない。実際、会社の利益成長の可能性に比べると、PERの重要性ははるかに低い。
③買い時はいつか。
・株価のサイクルとしては、通常、①底固め、②上昇、③天井、④下落、の4つのステージを辿る。大部分の急成長株は、第2ステージで急激な上昇をする。
・私の目標は、第2ステージの直前、つまり株価が大幅に上昇する直前に買うことだ。底値拾いをしようとすると、時間の浪費で終わる。それは本質を見逃している。
・機関投資家の資金が流れ込んで、株価が大幅に上昇するときに、その銘柄に乗るのが良い。そのためには、投資する前に資金が流入し始めているかどうかを確認する必要がある。
④退場を避けるには。
大きな損失を避けるということが、大勝するための最も重要な要素である。株価がどこまで上昇するかをコントロールすることはできない。しかし、損失を小さく抑えるか、大きく膨らませてしまうかは、殆どの場合、自分の選択次第である。
【教訓】
③買い時はいつか。
個人的には機関投資家の資金の流れを追跡するようなことは普段していませんが、一部の方々には参考になるかもしれません。
その他、移動平均線等から第2ステージを特定する試みも記載されていますので、チャーティストは原書をご参照ください。
④退場を避けるには。
大きな損失を避けるという意味では、リスクになるような投資先をそもそも選ばない、選ぶにしてもできるだけ小さなロットに留めるというのが基本かと思います。
損切りですら損として確定していることに変わりはないため、長期的により成長すると考えるから米国に投資しているとの基本理念に立ち返り、一時的にマイナスになっていても、損切りをすることも個人的には減りました。
結局は最初の時点での銘柄選定・買いのタイミング(多くの人が買っているからと言って慌てて飛び乗らない)の判断の重要性を痛感している今日この頃です