参考になった書籍/投資全般

自分が汗水たらして稼いだお金を失うというリスクに晒されることになる以上、他のプレイヤーが知っていて自分だけ知らないという知識があってはならないとの危惧感から、最初期の資格取得後は、関連書籍を重点的に読みました(最初の2年くらい)。
以下、定評ある書籍のうち、個人的にも参考になったもので、現時点でも糧になっているものとの観点から、いくつかピックアップして紹介いたします。

まずは、個別の方法論より、そもそもなぜ投資をする必要があるのか、何が目指すべき姿なのかといった全般論から。
筆者の主な主張のうち、個人的に特に勉強になった内容をいくつか抽出するにとどめていますので、ご興味あるものがありましたら、原典をご参照ください。

1.ロバート・キヨサキ『金持ち父さん貧乏父さん
【概要】
①自分が働くか、お金が働くか。
中流以下の人間はお金のために働く。金持ちは自分のためにお金を働かせる。(42頁(初版32刷))

②「いい学校に行って、いい会社に就職すること」は大切か。
自分の「ビジネス」を持つことだ。
多くの人がいつもお金に苦労している直接の原因は大抵の場合、一生他人のために働いていることにある。
今日の教育制度は、いい成績を取って安定した仕事につくための準備を若者にさせることに焦点を合わせている。そのレールに乗ったまま就職した若者たちの人生は、会社からもらう給料を中心に展開されることになる。(104頁)

③経済的な自由を得るためには何が必要か。
多くの場合、勝利は敗北の後にやってくる。例えば、自転車に乗れるようになるには、何度も転ばなければならない。
大抵の場合、人が金銭的な成功を手に入れられない最大の原因は、金持ちになる喜びよりも、損をする苦しみを考えるからだ。
成功を手にする人は、失敗しても、それが自分をより強くより賢くしてくれることを知っている。(186頁)

【教訓】
・具体論としては次の『キャッシュフロー・クワドラント』の方がより参考になりましたが、より初歩的な心構えを身につける契機になりました。
・何でも「まずは自分が手を動かして」と考えがちな貧乏性の自分にとっては、お金を自分のために働かせるという視点は貴重でした。
・「いい成績を取って安定した仕事につく」ことを重視した結果、キャリア終盤で「いつもお金に苦労」することになった「貧乏父さん」と、中卒で事業を開始せざるを得なかった結果、経済的な自由を手に入れることになった「金持ち父さん」がそれぞれ誰だったのか、読んでいくうちに知って、軽い衝撃を受けました。笑

2.ロバート・キヨサキ『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント
【概要】
①職業の4分類とは何か。

Employee(従業員) Business Owner(経営者)
Self Employed(自営業者) Investor(投資家)

クワドラントとは、円を四等分したもの。
我々の多くはこの4つのクワドラントのどれかに属している。
概要以下のとおり。
Employee(従業員):自分以外の個人や会社のために働いて給料をもらう。
Self Employed(自営業者):自分のために働いて収入を得る。
Business Owner(経営者):自分が所有するビジネスから収入を得る。
Investor(投資家):投資から収入を得る。(25頁(初版24刷))

②貧乏父さんと金持ち父さんの教えはどう違ったのか。
いつもお金に困っていた貧乏父さんのアドバイスは、給料をたくさんもらえるEか収入のいいS、つまり医者や弁護士、会計士のような専門知識を持った自営業者になれということだった。
一方、あまり学校に行かなかった金持ち父さんはまったく違うアドバイスをした。「学校に行って、卒業したらビジネスを立ち上げ、投資家として成功しろ。」(26~27頁)

③表の左側と右側でどういった違いが現れるのか。
クワドラントの左側(EとSの側)と、右側(BとIの側)の違いに気づかせてくれたのは、二人の父の「言葉」ではなく、彼らが実際にやっていたことだった。
その違いははじめは目に見えないほど小さかったが、時が経つにつれて大きくなっていった。
私が小さいとき、心の痛みとともにあることを学んだ。
それは、二人の父が私とともに過ごす時間の違いだった。
二人の父は年を重ねるごとに成功を収め社会的地位を上げていったが、一方の父が家族と過ごす時間はそれにつれてどんどん少なくなっていった。
貧乏父さんはいつも旅に出ているか、会議中か、そうでないときはどこか遠くで開かれる会議のために飛行場に急ぐ途中だった。
一方、金持ち父さんの方は、成功を収めれば収めるほど自由な時間が増えていった。(43頁)

キャッシュフロー・クワドラントをよく見ると、左側の原動力が安定を求める気持ちであるのに対し、右側の原動力が自由を求める気持ちであることが分かる。(84頁)

④4分類に応じた特性はどう現れるか。
Eは他人が作ったシステムのために働く。
Sは本人がシステムとなって働く。
Bはシステムを作り出し、管理する。
Iはシステムにお金を投資する。
お金が必要だと思ったとき、Eは仕事を探し、Sは自分一人で何かを始める。
Bはシステムを作ったり買ったりしてお金を作り出し、Iはより多くのお金を生む資産を探して投資する。(193頁)

⑤経済的に自由になることを望む場合、どの分類にいるべきか。
4分類のどこに属していても経済的に自由になることは可能だが、経営者(B)あるいは投資家(I)が持つ技術を使えば、より速くゴールに到達できる。(26頁)

金持ちは収入の7割をIから、残りの3割をEから(自分の会社の従業員として)得ている。
中流以下の人は、少なくとも8割をEかSから得て、Iからの収入は2割に満たない。(65頁)

今どれだけ稼いでいようと、誰でもいずれは自分のお金の一部をIクワドラントに回さなければならない。Iクワドラントはお金がお金を作り出す場所だからだ。(68頁)

経済的に今より安定した状態になるためには、EやSのクワドラントで仕事をする一方で、BやIのクワドラントについて学ぶことだ。
キャッシュフロー・クワドラントのどちらの側でも自分がやっていけるという自信がつけば、たとえ持っているお金は少なくても安心した気持ちでいられるようになる。(99頁)

⑥クワドラントの左側から右側に行くには何が必要か。
仕事を終えた後、自分が稼いだ給料と余った時間を使って何をするかで未来が決まる。
クワドラントの左側でせっせと働く人は、いつまでもせっせと働き続けることになる。一方、クワドラントの右側で一生懸命働く人は、経済的な自由を見つけるチャンスをつかむ。(106頁)

貧乏父さんは、重要なのは給料だと思っていた。
金持ち父さんは、重要なのは不労所得だと教えてくれた。
そして、そのための方法として、資産を築き、株の売買益などの資本利得(キャピタルゲイン)、配当、ビジネスからの残余利益、不動産からの家賃収入、特許使用料・印税といった不労所得を増やす努力をするようにと、いつも私たちに言っていた。(310頁)

⑦銀行員やお金の「専門家」は信用できるか。
残念なことに、学校でのファイナンシャル教育が不足しているせいで、大抵の人は銀行家、ファイナンシャル・プランナー、株式ブローカーなど、お金の専門家だと自分が信じる人々に、何も考えずにただ自分のお金を渡してしまう。
そして、さらに残念なことに、これらの「専門家」の大部分は本当はIクワドラントの投資家ではない。
大抵はEクワドラントの「従業員」で給料のために働いているか、Sクワドラントで自営するファイナンシャル・アドバイザーで手数料や歩合のために働いているに過ぎない。(128頁)

【教訓】
E(従業員)、S(自営業者)、B(経営者)、I(投資家)の4分類は、その後の自分にとって、思考枠組みの一つとして定着した考え方でした。
経済的自由を得ることを目標とするのであれば、EやSだけで安住していては足りず、BやIの方にも移行していく必要があるとの危機感を自分に抱かせてくれました。
長らく使える道具を提供してくれたという意味では、とてもありがたい本だったように思います。

もっとも、批判的に読むとすれば、作者の身の回りで起こった一部の事例(金持ち父さんと貧乏父さん)だけを過度に一般化することの危険性にも自覚的であるべきだとは思います。
実際、E(従業員)やS(自営業者)よりB(経営者)やI(投資家)の方が成功し易いなどという保証はなく、単純な確率論から言えば、現実はむしろその逆を示すことになるものと思われます。
(だからこそ、よりリスクヘッジした生き方として「いい学校に行って、いい会社に就職する」との考え方が定着したものと思われます。)
その意味では、「キャッシュフロー・クワドラントのどちらの側でも自分がやっていけるという自信」が持てれば、多くの人にとって有益であろうといった程度が、広く主張できる結論としては座りが良い辺り、ということになるのかも知れません。

3.トマス・スタンリー他『となりの億万長者 成功を生む7つの法則
【概要】
・1995~1996年、500人以上の資産家にインタビュー、1万人以上の高額所得者にアンケートを実施。「億万長者」(100万ドル以上の純資産を持つ人々)に共通してみられる特徴を抽出。1996年、初版刊行。米国でメガヒットとなった。
・客観的なデータ・統計に基づいた議論は傾聴に値するように思われます。米国ではこの種研究スタイルが確立されたのが早い印象。
・「億万長者」に共通する特徴や行動パターンが多く抽出されており、「なりたい人になる」という意味では、参考になる内容が多いものと思われます。
・以下では個人的に参考になったいくつかを紹介いたします。

①億万長者によく見られる特徴は何か。
・億万長者の7割の世帯では、夫が家計所得の8割以上を稼いでいる。
・億万長者の3分の2は事業家、自営業者。
・自営業者のうち4分の3は自分で事業を始めた起業家。残りは独立した医師・弁護士・会計士など。
・業種はごくありふれた、たいして面白くないものが多い。溶接・舗装の下請け、競売人、米作農業、害虫駆除等。
・億万長者の2割は既に引退している。
・年収の最頻値は13万ドル。
・平均資産額は370万ドル。
・年収は資産の7%以下。
・97%は持ち家に住んでいる。家の平均額は32万ドル。
・億万長者の8割は自分一人の力で金持ちになった。遺産を貰えなかったから不利だったと感じたことはない。
・教育レベルはそこそこ高い。大卒8割、大学院卒2割。8%が弁護士、6%が医師。(26~29頁(12版))

②資産を築く秘訣は何か。
・収入より低い支出で生活する。
・資産形成のために、時間・エネルギー・金を割く。
・世間体より、お金の心配をしないで済むことを大事にする。
・社会人になったら、親からの経済援助は受けない。
・子どもたちも経済的に自立している。
・ビジネス・チャンスを掴める。
・ぴったりの職業を選べる。(21頁)

③「蓄財優等生」、「蓄財劣等生」とは何か。
期待される資産保有額としては、年齢×年収÷10。
「蓄財優等生」とは、期待資産額の2倍以上の資産を持っている人。
「蓄財劣等生」とは、期待資産額の半分以下の資産の人。(31~33頁)

④倹約家である必要はあるか。
資産のある人は、次の3つの質問にイエスと答える率が高い。
・あなたの両親は倹約家でしたか。
・あなた自身は倹約家ですか。
・あなたの妻はあなたより倹約家ですか。(61頁)

億万長者は攻めも守りもしっかりしているが、どちらかと言えば、守りに強い方がうまく資産を築く傾向にある。資産形成の第一歩は守りにある。(63頁)

予算に関する次の質問に億万長者は4つともイエスと答える確率が高い。
・あなたの家庭では、毎年予算を立て、それに従って支出していますか。
・食費、医療費、住居費にいくら使ったか把握していますか。
・あなたは人生設計を立て、毎年の目標を立てていますか。
・将来のために資産運用計画を立てていますか。(67頁)

⑤高収入でないと、億万長者にはなれないか。
億万長者は、収入ではなく資産で物事を考える。
資産形成に収入額は大して意味を持たない。
10万ドルから20万ドルの収入があれば、それ以上いくら稼ごうがあまり関係ない。それよりも、持っている資産をどう運用するかの方がずっと重要だ。(92頁)

⑥高収入であれば、億万長者になれるか。
驚くことに、高額所得者(年収10万ドル以上)では、学歴と資産レベルは反比例する。
医者・弁護士などの家計費はどうしても高くなる傾向がある。十分な貯金がなく、金が出て行く一方だと心配するのも医者に多い。(110頁)

高級車や高価な服などの贅沢品に使う時間と、資産運用計画に使う時間は反比例する。どちらに時間を使うかで、人々のタイプは二極化していく。(122頁)

物は人を変えてしまう。一つでもステイタス・シンボルになるような品物を手に入れると、それに合わせて次から次へと物を買い足さなくてはならなくなってしまう。そして、瞬く間にライフスタイルが変わってしまう。(155頁)

平均的な億万長者は、自分のものであろうと家族のものであろうと、1着400ドル以上のスーツを買ったことはない。
高価なスーツを買う人を職業で見ると、中間管理職(特に共働きの場合)、弁護士、医者などが多い。(54頁)

⑦億万長者によく見られる子に対する姿勢はあるか。
資産家の両親がしっかりした子を育てる方法
・子供に親が金持ちだと教えない。
・子供には倹約とけじめを教える。
・子供や孫に何を遺産に与えるつもりか、話さない。
・現金や高価なものを駆け引きに使わない。
・巣立った子供の家庭のことに立ち入らない。
・成功をものではなく、何を達成したかで計る。(275頁)

成功した親にありがちな運用。
毎年、子・孫にそれぞれ1万ドルずつ贈与。贈与税がかからず、将来の相続税も軽減出来るから。(219頁)

親のスネをかじる子供は、親の世話にならずに自立している同所得層の人々よりはるかに少ない資産しか築けない。経済的援助を与えれば与えるほど子供は資産を蓄えず、援助が少なければ少ないほど資産を築くようになる。(197頁)

金持ちの子供が就く職業としては、会社役員、起業家、中間管理職、医師、広告・マーケティング・営業職、弁護士、エンジニア・建築家・科学者、会計士、大学教授、小中高校の教師など。(207頁)

【教訓】
・億万長者と聞くと、①出自に恵まれている、②特殊な才能を持っている、③収入の高い仕事に就いているといった印象を抱きがちですが、調査結果が示す結論は必ずしもそうではないというのは、新鮮な発見でした。
(①億万長者の8割は自分一人の力で金持ちになった。②③業種はごくありふれた、たいして面白くないものが多い。)
・他方で、億万長者には倹約家が多いというのは、多くの人にとって参考になる部分ではないかと思われます。
・資産額が一定以上になると、収入自体は資産形成に大して意味を持たなくなるというのも、多くの人が実感していることではないかと思います。
・「それよりも、持っている資産をどう運用するかの方がずっと重要だ」の言葉のとおり、ロバート・キヨサキ氏のいうIクワドラントでの振舞いがより重要になってくるものと思われます。

4.リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子
【概要】
単なる投資戦略を超えて、より根本的な、人間が生きる意味や戦略的に有効な生き方にまで関わる考察として有益でしたので、併せてご紹介します。
①我々自身の特性を知ろうとするとき、何に注目すべきか。
自然淘汰が我々を創りあげた。だから、もし我々が自分のアイデンティティを理解しようとするのなら、自然淘汰というものを理解しなければならない。(序文(7刷))

②我々を支配しているものは何か。
我々及びその他のあらゆる動物は、遺伝子によって創りだされた機械に他ならない。
成功した遺伝子に期待される特質のうち、もっとも重要なのは非情な利己主義である。(3頁)

③生物の生きる目的は何か。
生物にとって最も重要なのは、個体の生存と繁殖である。
だから、動物たちは、食物を見つけ捕まえるために、自分が捕まって食べられないために、病気や事故を避けるために、不都合な気候条件から身を守るために、異性を見つけて交尾するために、自分たちが享受しているのと同じようなことを子供たちに授けるために、いかなる労をも厭わない。(90頁)

④雄と雌の性戦略
雄の性細胞すなわち精子は、雌の配偶子に比べてはるかに小型で、しかも数が多い。
雌の性細胞すなわち卵子では、発育する赤ん坊に数週間にわたって十分な食物を供給できるだけの栄養分と大きさが備わっている。
個々の精子は微小なので、雄は毎日膨大な数の精子を作ることができる。
これは、別々の雌を相手にすれば、雄が極めて短期間のうちに多大な数の子どもを作る潜在能力を持っていることを意味する。
かくして、雌性とは搾取される性となり、卵子の方が精子より大きいという事実がこの搾取を生み出す背景にある。
雌がこの難題に対処する現実的な方策は二つある。
一つは家庭第一の雄(Good Dad)を選ぶこと、もう一つはたくましい雄(Good Gene)を選ぶことである。
後者の戦略の場合、雌は雄から援助を受けることを諦め、その代わりによい遺伝子を得ることに全力を傾ける。彼らのよい遺伝子は、自らの子孫に利益をもたらすからである。
雌の目から見た場合に雄の備えるべき最も望ましい性質の一つは、端的に性的魅力そのものである。一度その種の基準が同種の雌の間で受け入れられるようになれば、単に魅力的だというだけの理由で、自然淘汰において有利さを保持し続け得るためである。(214~240頁)

⑤一夫一妻は必然か。
精子と卵子の大きさ及び数にみられる根本的な差異が原因で、雄には一般に乱婚の、雌には一夫一妻制的な傾向が見られる。(251頁)

⑥最善の対人戦略は何か。
反復が許される囚人のジレンマ状況において、最も勝利を収めた戦略は、驚くべきことに、最も単純で、表面的には最も巧妙さに欠けるものだった。
それは「やられたらやり返す(tit for tat(しっぺ返し))」と呼ばれるもので、最初の勝負は「協力」で始め、それ以後は単純に前の回の相手の手を真似するだけである。
「やられたらやり返す」では、決してゲームに「勝つ」ことはない。せいぜい相手と引き分けることができるだけだ。しかし、それは引き分けることによって高得点を達成するのである。(318~341頁)

【教訓】
・この種分野では何の科学的根拠も伴わない言説が多い中、動物界の観察に基づき、進化生物学の観点から、仮説を導き出す思考様式は、自分にとって新鮮でした。
・男女の恋愛も、遺伝子にビルトインされた本能に従って、それぞれの性が戦略を立案し、遂行している一過程に過ぎないと捉えれば、妙な浪漫主義に陥らないという意味で、有益な視点も得られるかもしれません(特に夢見がちな若者にとって)。
・「やられたらやり返す」は、最初は「協力」から始まる点、相手が裏切ったら一度だけ「やり返す」点が肝なように思います。リアリズムを前提にしつつも、世の中を醜い裏切り合いの社会にしないという意味で、心の救いをもたらしている戦略であるように感じます。

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