インデックス投資を推奨する方々が主張する内容は共通する部分が多いように思います。要旨は以下のとおりです。
①個人投資家は、株を売ったり買ったりすればするほど負ける(「敗者のゲーム」)。そのような泥沼から距離を置くことが勝利の秘訣である。
②「経済学的に最も正しい投資法」は、市場全体に投資することである。市場全体の長期的な成長に賭ける。市場全体に賭けたら(=インデックス投資をしたら)、カジノからは退出し、二度と近付かない。
③長期的に見れば、そのようなやり方で8割のアクティブ・ファンドに勝てる。
個人的にも、これらの教えが自分の投資戦略の基盤になりました。
ガチャガチャしても結局負けるだけなのであれば、何も考えずただ市場全体に投資して(S&P500など)、残った時間は仕事や勉強などに使った方が有意義です。
それで8割の「投資のプロ」に勝てるのであれば、選ばない手はありません。
特に初期段階で、色気づいて短期売買を繰返し、あっという間に退場するという経緯を辿らなかったという点で、これらの教えにはとても感謝しています。
1.バートン・マルキール『ウォール街のランダム・ウォーカー』
【概要】
①個人投資家に望ましい投資戦略は何か。
個人投資家の場合、個々の株式を売買したり、プロのファンド・マネージャーが運用する投資信託に投資するよりも、ただインデックス・ファンドを買ってじっと待っている方が、遥かに良い結果を生む。
②長期保有か短期売買か。
・株式市場で金儲けをすることは、実際、それほど難しいことではない。むしろ難しいのは、短期簡に手っ取り早くお金を儲けられそうな投機に、お金をつぎ込みたくなる誘惑を振り払うことの方である。
・出来る限り売買の頻度は減らすべし。
・ウォーレン・バフェットも「ほとんどの投資家は積極運用するよりも、インデックス・ファンドに投資した方が、長期平均的にはより大きく報われる」と言っている。
③テクニカル分析は有用か。
テクニカル分析について、20世紀全般にわたる膨大なデータを用いた実証が行われた。その結論は、過去の株価を分析したところで、将来の株価を予測するのに何の役にも立たないということだった。
④どのインデックスに着目すべきか。
S&P500は、時価総額ベースで、米国の全上場銘柄の4分の3をカバーする。長期的には、ほとんどの投資のプロを上回るパフォーマンスを上げることができる。
2.チャールズ・エリス『敗者のゲーム』
【概要】
①アクティブ運用かパッシブ運用か。
・インデックス・ファンドは、面白くもおかしくもないが、とにかく結果が出る。実際、インデックス・ファンドは、長期的には殆どのポートフォリオ・マネージャーを打ち負かしている。
・長期的に見て、全体の80%のアクティブ・ファンドは市場平均に勝てない。どのファンドが20%に入るかを事前に見つけるのは、殆ど不可能である。
②個人投資家に望ましい投資戦略は何か。
・私たちはミラクル・ショットを決めようとするのではなく、とにかくミスの少ない、確実なテニスをすべきである。
・個人投資家が市場を見ながら売買すると、大体失敗する。彼らはマーケットの中心から外れているため、楽観しすぎたり悲観しすぎたりして上昇相場にも下降相場にも乗り遅れるから。
③長期保有か短期売買か。
・株式市場は短期的には乱高下するが、長期的な動きを予想するのはそれほど難しくない。
・長期の資産運用を行う上では、相場の上下に気を取られず、じたばたしないことが何より大事である。長期方針を十分検討した上で決定したら、それをしっかり守っていくこと。
3.ジョン・ボーグル『インデックス投資は勝者のゲーム』
【概要】
①アクティブ運用かパッシブ運用か。
・簡単な計算で分かることであるし、歴史がそれを証明してもいるが、株式投資で成功する戦略とは、アメリカの上場企業の株式全てを、極めて低いコストで保有することである。
・過去90年のSP500の年間平均リターンは10%。
・平均すると、過去15年間で90%ものアクティブ運用の投信がS&Pインデックスに負けている。
・株式市場を長期にわたって保有することは勝者のゲームであるが、市場に勝とうとすることは敗者のゲームである。
②個人投資家に望ましい投資戦略は何か。
・ひとたび株式を買ったら、カジノからは退出し、二度と近づかないこと。そして、市場ポートフォリオを永遠に持ち続けるだけだ。これこそが、伝統的なインデックス・ファンドがやっていることである。
・市場よりも自分は賢いと思ってはならない。そのような者はいない。
・ウォール街では、「ぼーっとするな、何かやれ」という警句が有効だが、メインストリートの投資家にとっては、まったく反対のアプローチが有効である。「何もするな。じっとしていろ。」
4.橘玲『臆病者のための株入門』
【概要】
①アクティブ運用かパッシブ運用か。
・株式投資はギャンブルにすぎない。「株のプロ」など存在しない。
・短期売買はゼロサムゲーム。誰かが得すれば、必ず誰かが損する。
・ファイナンス理論の終着点はシンプル。インデックス・ファンドに投資しなさい。以上。
・「経済学的に最も正しい投資法」は、世界市場全体に投資すること。市場の長期的な成長に賭けること。
②個人投資家に望ましい投資戦略は何か。
・インデックス投資のメリットは、あまりにも簡単で、考える必要すらないこと。デメリットは平均的にしか儲からないこと。
・短期売買のメリットは、ゲーム性が高いこと(一度ハマるとやみつきになる)。デメリットは、ゼロサムゲームなので、初心者の大半が敗退して退場していくこと。
・8割をインデックス・ファンドに、2割を個別株に投資する。2割は全部失う可能性があることを覚悟する。
【教訓】
・常時参考にさせていただいている橘氏の書籍から。皆が痒い話題に手が届くのは流石です。
・インデックス投資が理論上正しいということを前提としつつも、上で挙げた大御所の方々と比較すると、全部失うリスクがあることを覚悟できるのであれば、2割程度を個別株に投資すること(コア・サテライト投資法)も認めているのが読者(私)に優しいところです。
・実際、5年以上もマーケットを見ていると、インデックス投資のデメリットとして挙げられている「平均的にしか儲からないこと」が物足りなく感じるようになってきます。
・ある程度長期で相場を見続けた上で、プラスアルファを取りに行きたいとの野心があり、自己責任として消化し切れる範囲内で楽しむという程度であれば、「ゲーム性の高い」個別株を嗜むことも、魅力の一つかもしれません。(実際に2割を全部失ったら、改心しようと思います。)
5.橘玲『臆病者のための億万長者入門』
【概要】
①個人投資家が負けるパターン
人は損したとき、得したときの3倍くらいの痛みを感じる。ゆえに、投資家の典型的な行動は以下のようになる。
1)ちょっとでも損すると、慌てて売ってしまう。
2)損失が大きくなると、逆に売れなくなって、塩漬けにする。
3)さらに損が膨らむと、一発逆転を狙ってハイリスクな取引をするようになる。
②個人投資家が勝てる手法
個人投資家にとって最も合理的な投資法は、「暴落を待って、株価が回復するまでドル・コスト平均法で分散投資すること」。
【教訓】
・以下検討の帰結として、インデックス投資家でも暴落時の追加投資という手法を採用されている方は多いのではないかと想像します。
個人的にも地合いに助けられて大きく稼いだ要因の一つはこれであり(2020年のコロナ相場、2022年のFRB利上げ相場)、勝率の高い運用法の一つと考えています。
1)元々、長期的に成長すると考える市場を選んで、その全体に投資するという手法を採った。
2)暴落が来て、一時的に価格が下落した。この暴落があっても、全体の成長性はいずれ回復すると見込んでいる。
3)それなら、安くなっているときにいつもより多く買った方が得である。
6.たぱぞう『お金が増える米国株超らくちん投資術』
【概要】
①どこの国に投資すべきか。
・過去30年のチャートを見れば、TOPIXは右肩下がりの曲線を描き、長期成長していないことが見て取れる。対してSP500のチャートは、きれいな右肩上がりを描いている。
・日本株は米国株より5倍は難しい。
・新興国では、GDPと株価が連動しておらず、株価がさほど上昇しない。
②個別株の投資法
・米国個別株なら、買いたい銘柄をチェックしておいて、調整時に買うというのを意識しておく。
・個別銘柄に投資する場合も、基本的には長期投資が良い。いい銘柄を買って、じっくり持つ。
・株式投資は、時間を費やして研究したからといって、必ずしも成果が上がる訳ではない。
③暴落した時の対処法
強調しておきたいのは、「下がった時に積立投資を休まない」ということ。下がってきたときは多くの株を買うことができ、積立購入の成果を高める大チャンス。
【教訓】
・たぱぞう氏の書籍・ブログは、初期段階でよく参照させていただきました。
・「なぜ日本人なのに、アメリカに投資するのか」という問いへの分かり易い解答が示されています(本稿執筆時点(2025年8月)では少し様相が変わってきていますが)。
・調整時(暴落時)の買いという手法は、こちらでも紹介されています。
7.太田創『毎月3万円で3000万円のプライベート年金をつくる米国つみたて投資』
【概要】
①どの国に投資すべきか。
・30年間、ひたすら積み立てていける投資商品は、米国株式を対象とした投資信託。将来の成長性を考えるとき、日本よりも米国の方が、成長余地が大きい。理由はいろいろあるが、根本的なところで言うと、米国経済は日本経済より若いということ。
・過去30年間の年間平均リターンは、S&P500だと9.5%、日経平均だと1.5%。どちらで運用するか、答えは明らかである。
・世界の株式時価総額の割合はトップ5を上げると、米国54%、日本8%、英国5%、フランス3%、中国3%。つまり、米国の株式市場に投資すれば、世界の株式市場の半分に投資しているのとほぼ同じことになる。
②個人投資家に望ましい投資戦略は何か。
プロのファンド・マネージャーにでもならない限り、資産運用を行うのに、特別な知識や資格は一切必要ない。プロではない人にとって資産運用で一番大切なことは、安心感とともに継続できる仕組みを持つこと。
③暴落時の対処法
・たとえ暴落しても、時間が経過すれば回復するという事実は、特に長期の資産形成を行う人たちにとって、株式を長く持ち続けるための強力な拠り所になる。
・下がった時に爆買いすればよいのでは?との問いについては、底値を見極めるのはプロでも不可能である。そういう意味で、下がったからたくさん買うというよりも、感情を挟まず、淡々と毎月決まった額で、同じものを買い続けていけば良い。定時定額購入でも、基準価額が下がった時には、その分だけ口数を多く買えるので、長期的にはドル・コスト平均効果が効いてくる。
【教訓】
「なぜアメリカに投資するのか」、「株価が下落した時にどう対応すれば良いのか」との点は、ここでも同様な議論がなされています。