参考になった資格

資格オタクなので、資産運用という新規分野に参入するに当たって、手っ取り早く必要な知識を体系的に身に付けるには資格試験が効率が良いと思い立ち、最初期の段階であれこれ勉強しました。
結論的には、「この資格を取れば儲けられるようになる」とか、「この勉強をすれば投資で勝てるようになる」というような内容のものは、特になかったように思います。

いくつか勉強したものに関しても、日々の相場を見ている中で、その大部分の知識は抜け落ちて行きましたが、現時点で振り返ってみて、少しは役に立ったかなと思われるもののみ、いくつか列挙してみます。

他のところでも記載しましたが、日本の多くの高度資格は、過剰に細かい内容になってしまっていて、実用性に乏しい知識が多いです。
「大体分かっていれば良い。詳しい知識が必要になったら都度調べれば良い」とのスタンスで、入門資格の範囲のみ把握しておけば足りるかと思います。

1.証券外務員
(1)どんな資格か。

実施団体 日本証券業協会(認可金融商品取引業協会)
メリット 証券業務に関する基礎知識が身に付く(株式、債券、投資信託等)。
証券会社・銀行等で働く場合は必須。

(2)どんな試験か。

受験資格 誰でも受験可
試験日 いつでも受験可
試験会場 各地の試験センター(プロメトリック)
時間・方式 1種:2時間40分100問
2種:2時間70問
選択式
試験内容 以下
合格基準 7割以上得点で合格
合格率 6〜7割

主な試験内容

法令 金商法
日本証券業協会の規則
証券取引所の規則
商品 株式
債券
投資信託
関連事項 会社法
財務諸表
企業分析
証券税制

(3)投資に役に立つ情報はあるか。
個人的には、初期段階で以下のような基礎知識が身に付き、有益だったように思います。

法令/金商法 ・「金融商品」の種類
・「取引業者」の種類
・「取引業者」への規制
・「市場阻害行為」として規制されるもの(虚偽表示、相場操縦、インサイダー取引等)
・株式に関連する開示制度
商品/株式 ・株式売買時に証券外務員に課されるルール
・株価を分析する指標(PER、PBR等)
・株式市場全体の指数(TOPIX等)
商品/投資信託 ・投資信託の仕組み
・主なコスト(販売手数料、信託報酬等)
・運用手法(パッシブ運用、アクティブ運用等)
・ETFとは何か
関連事項/企業分析 ・成長性分析の指標(売上高成長率等)
・収益性分析の指標(売上高利益率等)
関連事項/証券税制 ・納税義務者(居住者、非居住者等)
・「所得」とは何か
・課税方式(総合課税、分離課税等)
・確定申告の要否・内容
・NISAとは何か

(4)効率的に学べる教材はあるか。
個人的には以下を活用しました。
ファイナンシャルバンク インスティチュート
うかる!証券外務員 最速テキスト
うかる!証券外務員 最速問題集

1種と2種の違いは信用取引・デリバティブまで扱うかで、個人投資家としてはリスクの高いこれら分野にまで進出してはならないという自戒も込めて(笑)、2種にて受験しました。

(5)学習に必要な時間はどの程度か。
前提知識がないところからのスタートだと、大体以下ぐらいかと思います。

参考書を通読するだけ 15時間程度
問題集を解いて、本試験を受験し、合格するまで 30時間程度

 

2.ファイナンシャル・プランニング技能士3級

(1)どんな資格か。

実施団体 金融財政事情研究会(一般社団法人)
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(NPO法人)
メリット お金に関する6分野の基礎知識が身に付く(社会保険、民間保険、金融資産、所得税、不動産、相続・贈与税)。

(2)どんな試験か。

受験資格 誰でも受験可
試験日 いつでも受験可
試験会場 各地の試験センター
時間・方式 学科:90分60問
実技:60分
選択式
試験内容 以下
合格基準 6割以上得点で合格
合格率 7〜8割(日本FP協会の場合)

主な試験内容

ライフプランニング 社会保険(健康保険、失業保険等)
公的年金(国民年金、厚生年金等)
リスクマネジメント 生命保険
損害保険
金融資産 株式
債券
投資信託
タックスプランニング 所得税
住民税
不動産 不動産の取引
不動産の税金
相続・事業承継 贈与税
相続税

(3)投資に役に立つ情報はあるか。
株式投資という目線で言うと、「金融資産」・「タックスプランニング」で習得する基礎知識は、全般に知っておいて損はないと思います。
その他の分野は、仕事で日常的に扱う訳ではないという人であれば、以下のような場面で役立つといった感じかと思います。

ライフプランニング ・社会保険・公的年金の制度を再確認したい。
・社労士の勉強までするのは億劫だが、基礎知識程度は押さえておきたい。
リスクマネジメント ・生命保険・損害保険の基礎知識を身に付けたい。
不動産 ・不動産の購入・売却をする予定がある。
・不動産周りの税金が気になる。
・不動産投資をこれから始める。
相続・事業承継 ・贈与・相続の基礎知識を身に付けたい。
・税理士の勉強までするのは億劫だが、基礎知識程度は押さえておきたい。

(4)効率的に学べる教材はあるか。
個人的には以下を活用しました。
受験業界では定評あるものの一つらしく、要領よくまとまっているように思います。
TAC
みんなが欲しかった!FPの教科書3級
みんなが欲しかった!FPの問題集3級

前述のとおり、資格の難度が上がって行くに連れて「木を見て森を見ず」になり、「現実世界をざっくり把握・整理する」という効用からはむしろ遠ざかって行く傾向がありますので、基礎知識としては3級程度の勉強で十分なように思われます。

(5)学習に必要な時間はどの程度か。
前提知識がないところからのスタートだと、大体以下ぐらいかと思います。

参考書を通読するだけ 20時間程度
問題集を解いて、本試験を受験し、合格するまで 50時間程度

 

3.企業経営アドバイザー

(1)どんな資格か。

実施団体 日本金融人材育成協会(一般社団法人)
メリット 企業経営に関する基礎知識(経営・財務・法務・生産管理・事業評価)が身に付く。
MBA・中小企業診断士の勉強までするのは億劫だが、基礎知識程度は押さえておきたいという人向け。

(2)どんな試験か。

受験資格 誰でも受験可
試験日 いつでも受験可(実践科目と講習は期間指定あり)
試験会場 各地の試験センター
時間・方式 知識科目:120分50問
実践科目:90分40問
選択式
対話力向上講習:1日
試験内容 以下
合格基準 6割以上得点で合格
合格率 5〜6割

主な試験内容

企業経営 経営戦略(SWOT、PPM等)
組織設計
行動心理(モチベーション、リーダーシップ等)
マーケティング
企業財務 財務諸表(BS、PL)
経営分析(生産性、ベンチマーク等)
管理会計(損益分岐点)
投資評価(設備投資)
企業法務 民法
会社法
知財法
生産管理 生産管理(PDCA、QCD、生産性、コアコンピタンスと外注)
プロセス管理(標準化、標準時間)
品質管理(パレート図、散布図と相関)

(3)投資に役に立つ情報はあるか。
個人投資家目線では、投資先のファンダメンタルを分析する基本的な指標を使いこなせるようになりました。
会社員(企業内弁護士)としては、自社の経営の問題点を発見し、改善する視点が得られました。
長年勤めた会社から転職した時期と丁度重なっていたこともあり、学習を通じて勤務先を比較する基準も貰えました。
以下では、個人的に役に立った視点をいくつか絞り込んで紹介いたします。

・官僚制の逆機能(経営学51頁)
【概要】
官僚制システムが過度に進行すると、以下のような問題が生じる。
①行動の標準化や規則の遵守により、個人の意思決定パターンが硬直化していく。(個々人が「訓練された無能」になっていく。)
②メンバーにとっては、規則を固守することが目標となり、処罰を免れるため規則どおりの行動しかしなくなる。
③過度な専門化と分業が進んだ結果、個々人の成長が阻害される。
④組織全体としてのイノベーションも起きなくなる。
対策としては、組織構造をフラット化する、プロジェクトチームなどの横断組織を作るなど。

【教訓】
古典的な日本企業で典型的に起きている問題のように思います。個人的にも転職動機の大きな部分を占めていたように思います。

・組織文化の逆機能(経営学74頁)
【概要】
組織文化は、組織としての一体感を高めるというメリットがある一方で、次のような弊害ももたらす。
①メンバーへの同調圧力をもたらす。
②思考様式の均質化と組織全体としての硬直化をもたらす。

【教訓】
こちらもJTC(Japanese Traditional Company)に多かれ少なかれ共通して見られる特徴ではないかと思われます。全体に「村社会」化して行き易い傾向が何に起因しているのかは興味あるところです。

・サービス業務の効果測定(経営学118頁)
【概要】
物品売買等と異なり、サービス業務の効果を測定することは難しい。それ故、サービスの内容ではなく、提供プロセスによって質を判断するという傾向に陥りがちである。

【教訓】
いわゆるコーポレート部門・管理部門に所属している者にとって、悩みの種の一つではないかと思います。業績評価の客観指標がないと、人事評価自体が恣意的なものになって行きます。
自分が属している法務部門でも客観的な効果測定の指標を確立することが必要であるように感じています。

経産省「ローカルベンチマーク」6つの財務指標(財務36頁)
【概要】

項目 算定
①成長性/売上増加率 当期売上高/前期売上高
②収益性/営業利益率 営業利益/売上高
③生産性/労働生産性 営業利益/従業員数
④効率性/営業運転資本回転期間 営業運転資本/売上高
⑤健全性/EBITDA有利子負債倍率 Net有利子負債/EBITDA
⑥安全性/自己資本比率 純資産/負債純資産合計

【教訓】
ローカルベンチマーク」は、「企業の健康診断」を行うツールとして経産省が公表しているものです。
高度な指標を使って分析してみても、企業の経営実態を正確に把握できたとは言い難く、そもそもファンダメンタルを分析したところで、投資で勝てるようにもならないという経験を何度もするうちに、上記程度の指標しか使わなくなりました。
誰でも一瞬で使える単純な指標としては、その会社の事業は伸びているかを示す①売上増加率が有用と思います。
あまり重要性のないことでも社員一丸となって取り組むことにやりがいを見出すという典型的なJTCに属していた人間としては、転職の際に重視したのは、少ない人数で効率的に事業運営が行われているかを示す③労働生産性でした。
その人の個性にもよりますが、特定の専門分野での知見の深さというよりは、ジェネラリスト的な幅広さを武器に仕事をしていきたいという私のような方にとっては、完成・成熟した組織でニッチな一分野を担うというよりは、これから伸びて行く組織で部門や業務を整備していくという方が合っているということもあろうかと思います。その意味で、個人的には、①成長性と③生産性の分析は重要でした。

・投資の判断基準(財務130頁)
【概要】
投資するかどうか、複数の投資候補のどれを選択すべきか迷った場合、投下資本額を回収するまでに何年かかるかで判断する(回収期間法)。

【教訓】
仮定の数値(インフレ率等)はできるだけ少ない方が良い、シンプルイズベストとの観点から、NPVやIRRまでの計算が求められないのであれば、単なる回収期間法を使うようになりました。

(4)効率良い教材はあるか。
TACのテキストが簡潔にまとまっていて、使い易かったです。
興味ある分野だけ購入して一読してみるのも良いかもしれません。
TAC『企業経営アドバイザー 認定テキスト&トレーニング』
1 企業経営・企業支援
2 企業財務
3 企業法務
4 生産管理
5 事業性評価

(5)学習に必要な時間はどの程度か。
前提知識がないところからのスタートだと、大体以下ぐらいかと思います。

参考書を通読するだけ 40時間程度
問題集を解いて、本試験を受験し、合格するまで 60時間程度

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